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井穴刺絡療法効果なし

 これはこのブログを検索してくださった方の検索用語の一つです。


 井穴刺絡とは伝統医学の治療法の一つです。

江戸時代の名医の治療経験が掲載されている書籍を見ると、通常の漢方治療で効果が出ない病態を井穴刺絡で改善させた治療実績が見つかります。

これはそれぞれの医師が受けたトレーニングと関係しているようで、漢方治療専門の医師・例外的に刺絡や針治療を行う医師・刺絡を頻用する医師など様々な状況だったようです。


 その井穴刺絡が効果がない場合には、いつくかの問題点を指摘できます。

まず第一には的確な方法での井穴刺絡になっているのか?という点です。

井穴刺絡は爪の生え際付近にある井穴と呼ばれるツボを刺激します。

一般的にはそのツボに針を刺して刺激します。

その針での刺激だけでは効果が出にくいのです。

指先からある程度の瀉血をしないと効果は不足します。

井穴刺絡をしなければいけない病態の場合には、指先を絞らなくても出血します。

しかもその血液の色がドス黒いのです。

瀉血して綿花で拭き取ることを繰り返しているうちに血液の色が鮮紅色になります。

この時点で次の指の処置に移ります。

この程度の刺激でなければ効果は出にくいのです。

つまり井穴刺絡として効果が出るのに必要な刺激になっているか?という問題があります。


第二には、井穴刺絡だけでは病態改善が不十分な場合があります。

かつて某大学附属青山自然医療研究所に所属していた時代に、以下の検討を行いました。

脈診をして井穴刺絡適応と判断した場合、治療後に脈診では改善を認めました。

しかし、他の条件を付けて脈診すると治療の必要性があることに気付きました。

井穴刺絡が全ての病態を改善できる技術ではありません。

たくさんある針灸治療の方法の中の一つの手段なのです。

井穴刺絡を過信してはいけません。


第三には井穴刺絡は起死回生の治療手段ではありますが、あまりにも体力が低下した状態では使いにくい手段でもあります。

患者さんの体力が井穴刺絡に反応できるだけのパワーがあるか?という問題です。

この判定はかなり難しいのは明らかです。

言葉を代えて表現すれば、井穴刺絡がその患者さんにとってのbest choiceか?という問題です。

第二の問題点で取り上げたように、針灸治療の手段はたくさんあります。

一般的に治療する者は自分が得意な治療手段で治療しますが、冷静に考えるとそれがbest choiceである可能性が高いのか?という問題です。

治療者にとってはbest choiceでしょう。

しかし、治療とは治療を受ける患者さんにとってのbest choiceが求められる筈です。

治療者の都合で決められて良いはずがありません。


これらの理由で井穴刺絡が効果がなかったのだろうと推測しております。



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