耳鳴りがひどく、都内の大学病院耳鼻科で治療を受けたのですが、意に反して耳鳴りが増悪したあげく、うつ病まで発症した患者さんが受診されました。
耳鳴りに苦しんでいらっしゃる方は多いですが、なかなか効果的な治療法が少ないですね。

 かつて漢方治療しかできない施設に所属していた時代に、耳鳴りは治るといってはいけない!と所内におふれがでておりました。
漢方治療ではうまくいっても、耳鳴りが気にならない程度にしか治らないのが普通でした。
耳鳴りはこのように治すのが難しい病態です。

 この患者さんはまず、身体が冷えきっておりました。
どうも寝室が寒いようです。
湯たんぽによる身体の加熱だけでは不十分ですので、一晩中暖房を稼働していただくことにしました。
もちろん湯たんぽは少なくとも、3時間に一度はお湯を沸かし直して使ってもらいました。

 こうして身体が温まるようにしただけで、身体が楽になったという実感がでてきたそうです。
1週間後の再診の日から、綿花を利用した班目式間接灸と気診治療の組合わせで治療を始めました。
耳鳴りがある患者さんは、首・肩が凝っていることが多いのです。
首が凝り過ぎて、耳に流れる動脈が圧迫されるのです。
その時に、鼓膜近くにある動脈の血液の流れが速くなるので耳鳴りがでてくるのです。

 治療としては、耳に流れる動脈が圧迫されない状態にすればいいのです。
うつ病が単独である患者さんも、首・肩の凝りが著しいのです。
首から上の血液の流れが悪くなって、気分が優れないのです。
この患者さんの場合では、耳鳴りとうつ病を合併しておりますが、どちらの病態も首肩こりを改善させればよくなる可能性が高いのです。

 首や肩の凝りを改善させればいいのですが、注意しなければいけないことがあります。
凝っている筋肉そのものを刺激すると、結果的に悪くなるのです。
刺激した直後は楽にはなりますが、そのようなやり方を繰り返していると楽になっている時間がどんどん短くなります。
最終的には刺激している傍ら凝ってくる状態にまで至ります。

 その解決法として、首のスジを刺激するのです。
班目式間接灸で首のスジを刺激すると、ほとんど左右に動かなかった首が左右に動くようになりました。
班目式間接灸の刺激前には右も左も5度程度にしか首は動きませんでしたが、班目式間接灸で首のスジを刺激した直後には約60度まで動くようになりました。
身体の他の部位を班目式間接灸で刺激した後に再び首のスジを班目式間接灸で刺激すると、首はほぼ真横まで向けるようになり、同時に耳鳴りが軽減してきました。

 この首・肩のこりが改善させられれば、耳鳴り・うつ病はともに治る方向に向かうでしょう。

 青山・まだらめクリニック 自律神経免疫治療研究所 http://www.dr-madarame.com