癌で死ぬのは何故でしょう? [病態]
癌で亡くなるとは何が問題なのでしょうか?
かつて所長は消化器内科医でした。
特に肝臓疾患を取り扱うことが多かったのです。
肝臓が悪い患者さんの中でも肝臓癌の対処に苦慮した時代がありました。
なんとか肝臓癌を治したい、と考えて肝臓癌はどんな病気なのか多くの患者さんのまとめを繰り返しました。
140例程度をまとめると、日本人全体に通用する話になると統計の専門家のアドバイスを受けました。
肝臓癌の患者さんのカルテを2ヶ月かけてまとめてみました。
特に気にしたのが死因です。
肝臓癌で亡くなる場合にはどのようにして亡くなるのか?
実際に診療していた時には、肝臓癌の基にある肝硬変のため食道静脈瘤の破裂や黄疸が出てきて、いわゆる肝不全で亡くなる患者さんや肝臓癌そのものが破裂して亡くなる患者さんの印象が強かったのでこれが三大死因とオボロに考えておりました。
しかし、多数の肝臓癌の患者さんをまとめてみると栄養失調で亡くなる患者さんが最多でした。
ちゃんと食事を摂っている時には食道静脈瘤の破裂や黄疸はそう簡単には起こらないのでした。
肝臓癌の破裂は交通事故にあったり、自分自身でおなかを擦り過ぎて破裂することがありました。このような場合には栄養状態はほぼ無関係でした。
肝臓癌の場合では直接死因ではないかもしれませんが、栄養状態が悪くなってから急速に死にやすくなるといって間違いがないことに気づきました。
他の臓器の癌患者さんも観察していると臓器の特異性もありますが、最終的には栄養失調で亡くなることが多いのです。
無理してもご飯を食べている患者さんは丈夫です。
考えてみると生命エネルギーというものは食物から摂取しています。
食べられれば生命エネルギーはなんとか確保できます。
中医学で言う先天の気は親からもらった体質のようなもの。
また後天の気は主に食事から供給されるものです。
これが生きていく上で大切なものなのです。
点滴で栄養が取れるではないか?点滴していれば長生きできるのでは?と思いますよね。
点滴で取れる栄養と口から食べる栄養では、その価値に雲泥の差があります。
中心静脈栄養が始まったばかりの頃には、これさえやれば生きていけるという論調がありました。
しかし、実際のところ中心静脈栄養は苦肉の策だったのです。
自分の口で食べることが、栄養を身につけるためには最も大切なことなのです。
もちろん何を食べるのか?は非常に大切なことですが、食べられなければ始まりません。
ちゃんとご飯が食べられるか?が生命力を反映します。
つまり胃腸の機能が良い方が長生きできると考えられます。
冷えの改善がなぜ必要なのか? [病態]
身体が冷えていると何が悪いのか?を解説します。
食事をしたらそれがすぐに栄養となるわけではありません。
食物を消化し、吸収して肝臓に届いて初めて代謝されエネルギーとして利用できるようになります。
胃腸が弱い方はエネルギーの産生量が少ないと考えて間違いないです。
身体が冷えている場合には内臓に十分に血液が流れているとは考えられないのです。
内臓の機能はその内臓に流れる血液の量に比例した機能しかしないという性質があります。
従って、身体が冷えている方は健康な方よりは、内臓の機能が低下している可能性が高いのです。
ここで危険なのが、エネルギーの産生量が少ないならば食べる量を増やしてエネルギーの産生量を増やそうとすることです。
胃腸の機能が悪い時に食べる量を増やすと却って胃腸の機能が悪くなります。
何しろ胃腸の負担が大きくなるからです。
無理は禁物です。
むしろ1回の食事の量を減らし、胃腸が耐えられる程度に少ない食事量にするべきです。
1回の食事量を減らすと、1日あたりの栄養が不足する可能性が高くなりますので、食事の回数を増やすことが必要になることが多いのです。
また、胃腸の負担を減らすために、よく噛んで食べることが大切です。
ご飯を口にした場合、何回噛んだらご飯がドロドロになるでしょうか?
試してみませんか?
咀嚼力は個人差が大きいので、一般論は通用しません。
ご自身の咀嚼力を試すのです。
十分にご飯を噛むと唾液が出てきます。
その時には胃液・腸液の分泌も盛んになり、消化吸収を助けます。
おなかの状態が食物を受け入れる体制が整ったところで飲み下すのです。
ご飯全部をこんなふうに丁寧に食べるのは難しいと思います。
最初の一口目、二口目だけはよく噛んで食べてみましょう。
おなかの状態が食物を消化・吸収するための準備ができてから飲み込む必要があります。
一日3回の食事が標準的ですが、胃腸の弱い方は1日に4-5回程度に小分けして食べなければいけない場合もみられます。
ある程度胃腸が強くなると3回/日の食事の回数で間に合うようになってきます。